Vest(権利確定)した上場株式等を外国の証券会社経由で譲渡したことによる損失について、なぜ上場株式等に係る配当所得等との損益通算と繰越控除の適用が無いかの理由を見ていきます。
租税特別措置法(以下、「措法」とします。)第37条の12の2第2項は、次のように規定されています。
2 前項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額とは、当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、上場株式等の譲渡のうち次に掲げる上場株式等の譲渡(第32条第2項の規定に該当するものを除く。)をしたことにより生じた損失の金額として政令で定めるところにより計算した金額のうち、その者の当該譲渡をした日の属する年分の第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額をいう。
• 一 金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者(同法第28条第1項に規定する第一種金融商品取引業を行う者に限る。次号において「金融商品取引業者」という。)又は同法第2条第11項に規定する登録金融機関(第3号において「登録金融機関」という。)への売委託により行う上場株式等の譲渡
…以下省略
太字中心に見ていきましょう。出だしの「前項」とは「上場株式等に係る配当所得等との損益通算の規定」を指します。
要するに、上場株式等に係る配当所得等との損益通算の対象となる損失の金額とは、金融商品取引法(以下、「金商法」します。)上の金融商品取引業者を通じて発生した上場株式等に係る譲渡損失のうち、譲渡した年分の他の上場株式等に係る譲渡所得等の金額と通算しても赤字として残る部分の金額を指します。
そして、金商法第2条第9項に規定する「金融商品取引業者」とは「内閣総理大臣の登録を受けた者をいう。」とされており、
登録を受けているかどうかは金融庁のHPで確認できます。
具体的には日本国内の証券会社を指しており、外国所在の証券会社は当然ながらありません。
したがって、上場配当等との損益通算は適用できません。
措法37条の12の2第6項は、次のように規定されています。
6 前項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額とは、当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、平成15年1月1日以後に、上場株式等の譲渡のうち第2項各号に掲げる上場株式等の譲渡(第32条第2項の規定に該当するものを除く。)をしたことにより生じた損失の金額として政令で定めるところにより計算した金額のうち、その者の当該譲渡をした日の属する年分の第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額(第1項の規定の適用を受けて控除されたものを除く。)をいう。
こちらについても、太字中心に見ていきましょう。「前項」とは「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の規定」を指します。
「第2項各号に掲げる上場株式等の譲渡」とは、今回の場合は「日本国内の証券会社を通じた上場株式等の譲渡」を指すため、
外国所在の証券会社経由の譲渡は対象外ということになります。
したがって、上場株式等に係る配当所得等と損益通算できない譲渡損失は、繰越控除も適用できないということです。(措法37条の12の2第5、6項)